風のタウマゼイン
第2回
書籍『 センス・オブ・ワンダー 』
( レイチェル・カーソン / 1996 )
キーワード
・人間と自然
・子ども
・感じるままに
風見正三
< 作品紹介 >
幼少の頃に育った茅葺の家屋の周囲には広大な屋敷林があり、
その先には美しい田園風景が広がっていました。
この本を読み返していると、幼い頃に仲間と過ごした森や、
そこにつくりあげた秘密基地が見えてきます。
そこで身体いっぱいに感じていた、自然の匂いや、
頬を撫でた風の感触が、鮮明に思い出されるのです。
本書は、海洋生物学者であり、ベストセラー作家のレイチェル・カーソンが、
甥のロジャーとともに、自然を探検し、様々な感動を見つける様子を、
みずみずしい文章で綴ったものです。
自然の雄大さ、神秘、時には恐怖を、子どもの頃と同じ、素直な感性で受け止めていくことで、
自然からたくさんの贈り物をもらえると著者は説いています。
『 わたしたちは、嵐の日も、おだやかな日も、夜も昼も探検にでかけていきます。
それは、なにかを教えるためにではなく、いっしょに楽しむためなのです 』(本書p10)
自然はどんな時でも、私たちをゆったりと受け入れてくれます。
その偉大な胸に、子どもの頃と同じときめきを感じて飛びこんでいけば、
きっと素敵なプレゼントを見つけることができるはずです。
<作品を知ったきっかけ>
私が、初めてレイチェル・カーソンの作品と出会ったのは、
アメリカの環境政策の原点にもなった世界的な著書である『沈黙の春』でした。
そして、その後に出会ったのが、この『センス・オブ・ワンダー』です。
環境学者の一人として、いつかこんな本を書いてみたいと思うほど素晴らしい作品でした。
レイチェルは、幼いころから文章を書くのが好きな少女で、
生物学に関心を持ったことから科学者の道に進むことになります。
そして、レイチェルは、海洋生物学者として活躍をしながら、学術的な論文だけではなく、
自然の神秘性やそれに目を向ける子どもたちの感性の大切さを伝えたいという思いから
『センス・オブ・ワンダー』という作品を生み出します。
この作品は、文学と科学を愛し、正義感に満ちたレイチェルが、
子どもが自然と交わっていく時に感じる、驚きや感動を表現したものです。
大きな自然を守るためには、身近な自然の神秘や驚きを忘れないことが一番大切であるという
人間としての原点を教えてくれます。
ガイア都市創造塾が生まれた根底には、この作品の存在が確実にあり、
塾のコンテンツの重要な鍵ともなっています。
今後、ガイア都市創造塾では、『センス・オブ・ワンダー』を呼び起こす
自然体験型のプログラムを充実させていこうと考えており、その原点はこの本にあります。
子どもたちのような、みずみずしい感性をなくすことがなければ、
地球の未来は永遠に輝くことでしょう。
◇『センス・オブ・ワンダー』の世界につながる、もう一つのオススメ物語
『 ウォールデン 森の生活 』
著者:ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
【作品情報】
『センス・オブ・ワンダー』
著者:レイチェル・カーソン
翻訳:上遠恵子
写真:森本二太郎
発行:1996.7.25
発行所:株式会社新潮社